建築への思い

 建築の設計の道を歩み始めて30年、この間、住宅をはじめとして共同住宅・事務所・文化施設・医療施設・福祉施設・商業施設等の建築や幾つかの地域の土地利用計画に携わってきた。様々なプロジェクトの内容は、その規模やコストあるいは期間や条件において全て異なってはいるが、にも拘らず全てに共通して言えることは、そのプロジェクトに参加している人々、特にユーザーとのコミュニケーションが如何に大切であるかという点である。このコミュニケーションによって新しい発見があり、豊かで快適な空間へのイメージが広がり、美しいデザインの創造が可能となる。その創作された建築物は、単にその建築物の単体だけの話ではなく、周辺の環境に対して心地よい緊張感を生み出すはずである。この様な思いを持ちながら、私たちの事務所は建築設計に取り組んでいる。
 最近とはいっても12〜3年前から、全く建築とは違った分野にも取り組んでいる。日本の城郭の石垣の設計である。日本各地にお城や城跡が残っているが、30年前頃から各地の城石垣の修復・復元工事が始まった。私たちが携わる以前は修復・復元の設計図が無く、職人の経験と勘で行われていたのであるが、ここ2〜3年でようやく修復・復元の設計図の必要性が認識され始めたところである。日本の城石垣、特に高石垣は400年の歴史を持つが、その素材・工法ともにダイナミックさと繊細さが同居している。それは一見シンプルに視えるが、内に秘められた技術はかなり高度なもので、物造りの原点を知らされているようであり、建築の設計に対して大きな刺激を与えている。